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にのまえはじめ
兵庫県神戸市出身。大阪府在住。
某ITベンチャー勤務、兼セールスライティングを軸に活動中の物書き屋。物語のドワーフみたく縁の下の職人的な生き方が理想。妻とふたり暮らし。カナダのモントリオールかスイスのマイエンフェルトに住みたい。詳しいプロフィールは<PROFILE>をタップ☟

[日本語の主語と述語]とある深夜ラジオの番宣CMで気になっていたこと

ラジオブース
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然ですが、こちらをご覧ください。というより、お聞きください。20秒ほどのCM音源です。

これは、お笑い芸人のみなみかわさんと声優の月森ねねさんが、ラジオ関西(関西ローカルのラジオ局)でやっている「トイズハート放送局」という深夜ラジオの番宣CMです。

僕がラジオ関西で深夜ラジオ(主にJUNK)を聴いているとき、わりとよく流れてきます。

にのまえ

番組そのものは聴いたことないんですが(笑)

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前から気になっていたこと

僕はだいぶ前からこの番宣CMを耳にするたび、気になっていたことがひとつありました。

それは「述語部分の言葉づかい」です。具体的には、CMのラストで月森さんが言っている――

一週間溜め込んだ欲望 この番組を聴いて スッキリしてね

という部分です。

これを聴くたびに僕は「ラストの語尾がなんかおかしくね?」と、毎回のように心の中でツッコミを入れていました。

じゃあ具体的に「どう変なのか」ということですが……それについてお話する前に「主語」と「述語」の基本について、ざっくり確認しておきたいと思います。

主語と述語の基本のキ

辞書を見ている人

主語と述語の関係は「かかり受け」と言われます。主語は述語に「かかる」、述語は主語を「受ける」というのが基本的な関係性です。

たとえば「食べる」という述語があるとします。これに対し、主語は「何が」という情報を与えます。

主語「人が」述語「食べる」

主語「犬が」述語「食べる」

このように「主語」があることで、はじめて「述語」の主体がハッキリするわけですね。言いかえれば「主語」と「述語」は、ある種の主従関係にあるとも言えます。

ちなみに「修飾語」は、「いつ」「どこで」「何を」「どのように」といった情報を述語に与える役割があります。こちらも「主語」と同じくらい重要なもので、たとえば会話していて「なんか話がうまく進まないなー」というとき、じつは「主語」よりも「修飾語」が抜けていたりします。

文末は誰の目線か

手紙の一部

……さて。それを踏まえて、さっきの月森さんのセリフを考えてみます。

まず主語は、省略されている部分も含めると「あなた(リスナー)が溜め込んだ欲望は」でよいと思います。

より厳密に言うと、主語である「あなたが」の部分と「溜め込んだ欲望は」の部分はそれぞれ分けて考えることができて、「総主語」と「主語」が云々…みたいな話もあるのですが、ここではどうでもいいので割愛します。

一方で、述語は「スッキリしてね」です。

だとしたら、ちょっと違和感がありませんか?

主語「あなたが溜め込んだ欲望は」述語「スッキリしてね」

述語は主語を「受ける」わけなので、文末表現も主語(主体)の目線であるべきです。

ところが主体である「あなた(リスナー)」の目線で考えると、自分ごとのハズなのに、どこか他人ごとっぽく聴こえるうえに、パーソナリティとの距離も感じてしまうというか……なんにせよ、そこはかとなく不自然さが生まれてしまいます。

あきらかな間違いというほどではないかもしれませんが、あまりしっくりきません。

いちこさん

じゃあどうしたらいいの?

って話ですが、もし僕が作家なら、シンプルに「スッキリさせてね」と表現するでしょう。

主語「あなたが溜め込んだ欲望は」述語「スッキリさせてね」

こう表現すれば、リスナー的にもちゃんと自分ごとに聴こえるハズですし、パーソナリティがちゃんと寄り添ってくれてるような雰囲気も感じられて、違和感もなくなるハズです。

ほんのちょっとした違いですが、個人的には「こういうのが意外と大事なんだよなぁ」と感じます。

まとめ

日本語は、いわゆる「てにをは」ひとつで意味がまったく変わってしまうほど、繊細でむずかしい言語です。そのぶん、たとえば英語よりもよほど豊かな表現の幅がある「可能性に満ちた言語」だとも言えますが――。

そんな日本語社会で生きている人間だからこそ、そして僕自身は「文章を書く」という仕事を多少なりともしているからこそ、こういった細かい部分を雑にせず、できるかぎり丁寧に「コトバ」を扱っていかないといけないな、と。

あらためて思う、今日このごろでした。

ところで、しょっちゅうラジオを聴いてると、こういうふうに「コトバ」の細かい部分で気になることがけっこうあって、それはそれでおもしろいんですが、同時に「なんで?」って思いますね。プロの作家さんがいるはずなのに――。

テレビやラジオの作家さんで日本語の細かい部分をそこまで気にする人って、じつはそんなにいないんでしょうかね?素朴に疑問です。

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